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 樹里咲穂サン

観る人を楽しませてくれて、
観る人を笑顔にしてくれて、
観る人を幸せにしてくれて。
そして本人も、いつも笑顔で。
そんな人だった。

樹里さんを初めて見たのはディエゴ君だ。
いいやつだった。
いいやつで、いいやつで。
それが樹里さんとの出会い。

そしてある作品に出会った。
「ブエノスアイレスの風」
そこで出会ったある人。
リカルド。
あの時のディエゴ君だ。
熱かった。
熱い熱い兄ちゃんだった。
何かを求め、戦い続ける男。
自分が何かした所で社会が変わるわけではない。
でも、何かを起こしたかった。変えたかった。
自分が理想とする社会を作りたかった。
熱くて、必死で。
いつまでも夢見て、自分の意志を変えない。
闘い続けた男。野望に一直線だった男。
本当に、本当にかっこよかった。
今でも魂の叫びが蘇るぐらいの熱演だった。
その熱演に心打たれ、ファンになってしまった。

そのせいか、私は「熱い樹里ちゃん」が大好きだった。
デュシャン、メンドリーニ。
どれも熱い役だった。
燃えていて、魂の叫びが聞こえるような。
しかし良い役の時があれば、アチャーな役も多かった。
…名前をあげたらキリが無いから言わないが。

そんな中、大作とか言われてるミュージカルに出ることになった。
ファントム。
樹里さんは和央さんの父親役だった。
うーん、ついにオッサン専科か…
なんて凹んでいたが。

「お前は素晴らしい歌手になれたはずだよ」

・・・私は思った。
樹里咲穂を好きでいて良かった、と。
脚本は本当に最悪だった。
この父親も本当にヒドイ人だった。
だけど、あの一瞬の感動を、歌声を、私は忘れないだろう。
どんなに私好みの役が来なくても、どんなに熱い役が来なくとも、
私はこの人を好きでいて良かった。

人は誰でも望むだろう。
トップスターになることを。
しかし光り輝くのはトップだけではない。
トップ以外にも、こんな道があるのだと。
樹里ちゃんは教えてくれた。
舞台の頂点ではなく、舞台の核だった。屋台骨だった。心臓だった。

だからこそ、退団が惜しかった。
なんで辞めちゃうの。
あなたはここにいるべき人なのに。
舞台に無くてはならない人なのに。

最後の役。
日生劇場の主演。
名前は「アーネスト」。
真面目、誠実、熱烈という意味。
不器用で、必死で、熱くて。
樹里ちゃんらしい役だった。
そして最後にアーネストが、樹里咲穂が魂を込めて歌う歌。
「こどものように」
魂を込めた歌を客席の心に響かせ、宝塚を去っていった。
最後までニコニコ笑顔で。

私は忘れない。
あなたに出会えた喜びを。
あなたに出会えた幸せを。
そして、樹里咲穂というタカラジェンヌがいたことを。
熱くて、いつも笑顔で、見る人を笑顔にしてくれた、
最高のエンターティナー・樹里咲穂を。